膀胱癌が見つかった。(その9、退院するが、その日の晩に救急へ)

手術後、2回目の夜が来る。

午後11時半頃に50cc程排尿。眠れないだろうから眠剤と鎮痛剤を飲んでベットに入った。排尿が心配だが、薬を飲むために水を少し飲む・・・。

夜中1時頃に目が覚め、150cc程排尿。しかし残尿は200cc程あった(悲)。またカテーテルを看護師に突っ込まれ導尿する。鎮痛剤を飲んではいるが、やはり痛い・・・。

うとうとしながら朝4時に100cc程排尿。今度は残尿は20cc程だった。それから暫く眠る事が出来、6時半頃に100cc。残尿は150cc程。排尿時には灼熱感というか、声が出る一歩手前の強い「ツーン!」とする刺激がある。

退院の決断

朝飯が来た。朝飯を食べていると初めて会う先生からいきなり、

初対面の先生

今日、退院していいよ

は?

早く退院したいのは山々だ。だがまだ血尿、残尿、排尿痛あるんだぜ?正直、カチンときた。いくら症状を訴えても排泄日誌に事細かに書いている症状に対しても何の反応も無し。何もしてくれないほったらかし感。

生命保険は入院5日目からしか出ない契約なのだが、有効になるその1日を更に入院したとしてもあまり給付金の恩恵に預かれない。この病院は居てても何もしてくれないし精神的にも肉体的にも苦痛だけだからもういいやと、家内に電話で相談してから今日退院する事に決めた。

・・・が、これが失敗だった。

病院側も早く退院させたいのか、患者に早期退院を実現してやろうと親切心で言っているのかは不明だが、退院の手続きだけは早いようだ。10時には退院できるというから、慌てて家内を迎えに来させる。私も急いで退院の身支度をする。

しかし、その時間になっても看護師はやってこない。どうなってるんだ。昼前になってやっと来た。今日は日曜日で会計が閉まっていて時間がかかったとの事。それを先に言え。一体なんなんだこの病院は!

だが、退院の儀式みたいな所は超が付くほど丁寧だった。アンケート等の評価を意識しているのだろうか。お別れの挨拶が済んで病棟から本館へ移動。正門から出ようとするが日曜日だから閉まっている。面食らってもう一度戻って救急の入り口から退院するという、なんだかすっきりしない感。

家内の車を建屋に横付けしてもらって久しぶりの再会。確かに帰宅できるのは嬉しかった。だが帰宅しても体調はすこぶる悪い。退院直後だからそりゃそうだろうけど、尿閉ではないが陣痛等は変わらない。一応、眠れないと困るので眠剤と、排尿しやすくする薬を処方してもらっていたが、効果はあまり感じられず、久しぶりの自分の布団に入ったが夜3時に尿意で目覚める。だが出ない。そして胸の溝内辺りと背中が痛くなってきた。また恐怖が襲ってくる。

救急外来へ

尿閉なのではと勘ぐる。勿論眠れる筈がない。これはまずいと意を決して病院に電話してみる。夜間担当の内科医が出てくれた。症状を話すと溜まっている可能性があるので来てくれとの事。今度は気の所為ではないらしい。

やっぱり急いで退院するんじゃなかったと後悔。

またこの真夜中に家内を起こして車で病院に連れて行ってもらう。俺はこんな真夜中に家内にまた運転させてる。申し訳ない・・・。

病院に着いた。今日退院したばかりなのにまた来ている。情けないやら虚しいやら。勿論正門は開いていないので救急窓口に向かう。家内にはコロナ禍なので怖いから車で待っててもらう。

その救急入り口から入ろうとしてもコロナ患者が勝手に入ってこないよう自動ドアは開かない。インターフォンでやり取りしてやっと入り口を開けてくれた。暗く誰もいない肝試しに出てくるそれのような待合室で待たされる。暫くすると看護師さんに呼ばれ、先ずはバイタルをチェックされる。次にエコーで左わき腹の腎臓辺りをぐりぐりまさぐってもらう。結果、尿は溜まってないとの事。

なんだ?

検尿を指示され、そのコップに出ない尿を何とか絞り出す。真っ赤なのが少しだけ出た。尿意や痛みは単に術後の後遺症の為だったのだろうか。尿を見た先生は少し驚いた表情を見せ、溜まってはなかったが、かなり膀胱が汚れているからと抗生物質を処方してくれた。なんで退院時に出してくれなかったんだろうか。ここで病院側に明らかな不信感が生まれた。だが、これも悪い方向へ向かうきっかけになる。

診察が終わり、会計を済ませる。割高の余計な出費だ。退院時に出てきた同じ救急窓口から再度病院を後にする。この時間にこの状況。帰りの車の中で大いに凹んだ。帰宅できたのは夜明け前だった。

翌日

もう自分で体調管理するしかないと思い、ペットボトルを半分に切って排尿量と色の変化や混入物をチェックようにした。検尿君と命名(苦笑)。

見てみると、こげ茶の尿。

自作「検尿君1号」

ありゃ。確か昨日までは赤かった筈。飲んだ抗生物質の所為か。出る量は大体100cc。トイレに行った所なのに、膀胱の内側を固い棒か何かでぐりぐり押されたような強い尿意が、尿道の根本から膀胱、へそにかけて感じる。

とんでもなく辛い。そしてとにかく尿がでにくい。きばっても一旦止まってツーンとして、後から絞るように出てくる。トイレを出てもムズムズ感で椅子に座ってられず、

「えっと、えっと、こ、これはどうすれば・・・」

と、サンダーバードの人形の如く手を前に出し、何もないのに何かを頼るように右に左に体を動かしてしまう。勿論、横になると更に酷くなるので寝る事すら出来ない。

尿の色をネットで調べてみる。こげ茶色は肝臓に関係のある病気だとか肝硬変やら肝炎やら癌だとか、色々な症状が紹介される記事がワンさと出てくる。それでなくても尿閉や痛みで参っている所にこの情報が頭にインプットされ、とうとう精神が病んでしまった。

もう駄目だ、と、小学生以来の声を出しての大泣きをしてしまった。声を家内に聞かれたくなかったので、タオルで顔面を塞いで天を仰いでの大泣き。今までのストレスやらなんやらが全てが噴き出した。悔しいやら腹立つやらで涙が止まらない。おいおい泣く。どのくらい泣いたか分からないが、暫くすると感情が治まってきた。泣くというのはストレスに良いと聞いた事があるが本当らしい。やっと冷静さを取り戻した。

私は酒もたばこもやらないし肥満でもなんでもない。日々筋トレで無駄な脂肪は落としストイックに生きてきた。直腸辺りの調子は良くないが、肝臓等の病気とは関係ない筈と冷静に分析して自分を宥める。

フィクションが群雄割拠するネット界

インターネットで情報を調べるのも大事だが、不正確な情報だったり、可能性を並べ立てているだけの所謂、アフリエイト目的だけのフェイク、フィクションといっても過言ではないページが多く存在するのがネットの現状だ。その情報を素人が取捨選択できる筈もなく、今更言うまでもないが、全てを鵜呑みにして過剰な情報収集は危険で、そして、精神的に良くない。暫くネットでの検索は控える事にした。(私のこの記事もそうならないよう気を付ける)

眠剤の相性

就寝しても常に尿意は消えないので眠れない。眠剤を飲むが、その効果で頭は「ふ~」っとなるのだが、寝落ちする位の時に何故か過呼吸時の恐怖を思い出してビクっと起きてしまう。

これを繰り返し、1時間ぐらいしたら頭がぼーっとしているだけで目が冴えてしまった。どうもこの眠剤は私の体には合わないらしい。

尿意で1時間、2時間置きにトイレに向かう。しかし出ない。出ても少量の血尿。気が狂いそうになる。

そんなこんなが一週間続いた。

つづく。