膀胱癌が見つかった。(その6、このコロナ禍に入院日を迎える)

ついに入院の日

束縛された長い日々を悶々と過ごし、何とかコロナに感染せずに入院を迎える事が出来た。

公共交通機関での来院は禁止されているので家内に車で送ってもらう。入院用の小さめの旅行用キャリーバッグを抱え、妻が院内でコロナに感染してもらっても困るので病院の玄関でおわかれ。そもそも入院付き添い、見舞いは禁止になっている。

「行ってきます」

なんだかなぁ(悲)

キャリーバッグをゴロゴロ言わせて受付へ。

PCRスクリーニング

入院する前にPCRスクリーニングを行う。入院説明時では30分程待つことになると聞かされていたが、このコロナ蔓延時期なので2時間も待たされる事となった。

赤い蓋が付いているプラスチックで先の尖った試験管のような容器に1㎝ぐらいつばをためる。ためる場所は小さな隔離用ビニールハウス。対応職員も不慣れな感じ。あたふたと確認しながら対応してくれる。

そのビニールハウスには唾液が出やすいように、梅干しやレモン等の写真が貼ってある。くしゃみが出そうで出ない時は電球を見ればいいというあれか。確かに1cmはなかなかでない。でもなんとか貯める事が出来た。

職員に渡し、結果が出ると携帯に連絡してくれるらしい。それまで院内で過ごさなければならない。でも密になる所では待ちたくない。妻に車で待っておいてもらえばよかったか・・・。

キャリーバッグをゴロゴロ言わせて院内をうろうろ。混雑しているのでなかなか落ち着ける場所がない。入院受付で事情を話すと目の前で待てといわれる。いやいや、一番混雑している受付で2時間もか?それは勘弁してほしい。

空いている場所を探しに、またゴロゴロ言わせて院内を徘徊する。ちょっと人目が気になるがしょうがない。比較的空いているレントゲン室の前を見つけたのでやれやれと腰を下ろす。ここで2時間か。

暇ひまヒマ。

暇つぶしのスマホを弄るがすぐに飽きてしまう。それより空調がかなりきつい。少し汗もかいたから風邪をひいてしまいそうだ。しょうがないから着替え用に持ってきた肌着をトイレに行って着替える。また、キャリーバッグをゴロゴロ転がしてトイレを往復する。

約束の2時間が経っても連絡なし。受付に行っ聞いてみる。すると、今日はコロナ患者が多いのでもう30分程掛かるとの事。がっくり。つくづく入院のタイミングは最悪だ。

来た時より少し空いていたので、受付前の待合席に座る事にした。ソーシャルディスタンスの注意書きは書いてないが、おのずと皆距離を保とうとしてはいる。

PCR検査の結果

しばらくして、スクリーニング検査を担当してくれた職員が私を見つけて声をかけてくれた。

「電話しようとおもったけど居たから」

と。よく覚えてるな・・・。結果陰性。

やっと入院受付を済まし、指示された入院病棟へまた鞄をゴロゴロ言わせて向かう。足取りが重い。ナースセンターで受付をする。若い看護師さんに案内され病室へ。パンフレットに映っていた写真とはイメージが違い、高い個室料金の割には広くない。ホテルの部屋紹介のそれと同じようながっかり感を味わう。旅行じゃないんだから我慢。

ひと通り説明を受け、あとは待つだけ。まな板の鯉。

いろいろ生活グッズをセッティングする。一番の頼りのノートパソコンをセットアップしてネットの接続を確認する。問題なく接続完了。そしてアマプラでジャズを流す♪

すこし安堵。

このネット環境を調べてみると、プロバイダはどうやら地元のケーブルテレビのようだった。ふむ。速度はまぁまぁ速い。これならイライラしなくて済みそうだ。

病室でコーヒー

そういえば飲み物がない。コーヒーが欲しいと思い院内のコンビニで500ccの水とコンビニコーヒーを買う。

部屋に戻り窓から外を眺めて明日の手術を待つ。やはり緊張する。ときおり看護師がきて血圧、体温、血中酸素濃度を図る。誰に言っているのかわからないが、声に出して読んでくれる。血中酸素は96~8位だった。血圧も100前後、体温は36.6度近辺。

看護師は来る度入れ替わる。当然全員マスクをしているから顔が覚えられない、名前なんて見る暇ないし、そもそも名前は覚えが悪い。

そして、剃毛の指示が来た。あ、やっぱ剃るのね。T刃のようなバリカンを渡され、自分でやってくれと。陰嚢の裏まで剃ってくれと注文される。終わったら剃り残しがないか見に来ますとの事だった。

以前の入院時で2回やった。一回は自分で。二回目は看護婦さん(当時)に沿って貰った。1回目は、シャワー室で誰とも知らないおっさんの剃毛を手本として見せられ、自分でT刃を使って剃らされた。もう一回は看護婦さんに処置室で剃られた。まだ若かりし時だったので、触られるとおおきくなってしまい恥ずかしい思いをした。

今回は自室にあるシャワー室で剃る。どこまで剃って良いのかわからないから足やお腹の方はで広めに剃る。それにしてもこのバリカン便利だ。T刃と違って綺麗に剃れる。肌を切る事もない。

ナースコールで確認にきてもらい、「はい」とズボンをおもむろに脱ぎ、陰部を陰嚢の裏まで見せて確認してもらう。時と場合が変われば猥褻行為。奇妙な感覚。

「完璧です」

と褒められた。なんだかな。

白い巨塔

暫くまた音楽を聴きながらベット上で過ごす。今日は何故か足がつる。すると、白い巨塔よろしく、先生達が白衣で5,6人ずらっと入ってきた。挨拶するが全員私を見て何も言わない。

・・・沈黙が流れる。

どうすりゃいいのさ、足がつっているのでベット上で正座もできず胡坐をかく。よくみると以前、わざわざ電話をくれた担当医師がいたので「先日は」とお礼をいってみた。「では、明日頑張りましょう」といわれ、またみな無言で去っていった。

・・・

病院食

暫くすると夕飯が来た。想像通りしょぼい。でも味はしっかりついていてまぁまぁおいしい。この辺は流石研究されているようだった。量は腹八分。この分量とカロリーだと更に痩せそうだ。

暫くして看護師にいつも飲んでいるサプリを聞かれた。問診票につらつらと書いていた症状は全く無視されている。早く精神安定剤くれないかな。

夕飯を食べ終わり、ネットも飽きたのでシャワーを浴びる。シャワーから出てバスタオル一丁の状態の時に担当医が部屋にやってきた。着替えるからちょっと待ってくれと言うが、そのままで良いと話を進められる。

どうやら飲んでいたサプリのEPAがまずいらしい。血液をサラサラにする成分があると血を固める成分がどうとかで駄目らしかった。いつも病院や健康診断ではその類のサプリは食事と同じで完全に無視されるので、また書いてもしょうがないと思って書いてなかった。いつもなんでこう逆になるのか。でも、昨日の朝から飲んでない。それを告げるとサプリだしそこまで成分は濃くないからまぁいいかという事になった。医者から初めてサプリは飲むなと言われる。ええ、もう飲みませんよ。

そして、下半身麻酔より全身麻酔にしようか?と言われる。いきなり言われても心の準備が出来てない。大体、全身麻酔は付き添いがいるんじゃないのか?と聞くと特に要らないらしい。初耳。自分では判断できない。先生の良い様にしてくれと告げる。何か意味深な事だったのだろうか。上手くいけばいいのだが。それにしても、バスタオル一枚で白衣を着た人物と話しをするというのは、夢を見ているような奇妙な感覚だった。・・・・本当に夢じゃなかろうかとつくづく。

明日はいよいよ手術当日。以前も経験したが、手術よりそのあとの夜が怖い。不安を抱きつつ、その日は無理やり処方してもらった眠剤を飲んで寝る事にした。

兎に角頑張らなくちゃ。

つづく。