SONY マイクロカセットレコーダー M-203のテープが回らないので修理する。

懐かしのマイクロカセット

机を整理していたら、マイクロカセットが出てきた。

恐らくは、留守番電話の録音用だったと思うのだが、もしかすると、子供の頃の会話を録音したものなのか、確か、今でいうボイスレコーダとしてマイクロカセットレコーダーを使っていたような記憶があるので、中身を確認せずに廃棄するのは少し勿体ないので、プレーヤを手に入れる事にした。

プレーヤーをフリマでゲット

オークションやフリマで検索すると完動ものはプレミアなのか結構なお値段がする。んじゃ、壊れてても直せるレベルのものをいっちょかったろうかいなと物色する。恐らくは、電源は入るがテープが回らないのはドライブベルトが切れているだけだと踏んで、そのレベルで出ていたSONY M-203を最安値で落札。送料込みで1,000円ちょっと。「ポケット203」という名称で、1980年代発売、定価20,000円だったもの。

ま、おもちゃを手に入れたと思ったら安いもんだ。

さて、数日後に到着。

程度はまぁまぁかな。ちょっと匂いが・・・。

フリマ等の通販での落とし穴は匂い。何度かそういう商品の取引をした事があって、出品商品で説明していてくれれば良いのだが、低評価ポイントはやはり公表はしたくないのが本音だろうとは思う。だがそこは正直に書いてほしい所。自分が鼻が利くので余計に感じるのだが、鼻が利かないと言われれば何も返す言葉はないのだが・・・。

さて、そんな事は置いといて動作確認。単三電池2本をセットし再生ボタンを押すと、説明通り電源は入るがテープは回らない。よしよし。電源が入ってモーターの回る音がすればOKだ。

修理作業開始

早速分解。

まず、カセットカバー部分だが、カセット取り外し方向にスライドする事で外すことが出来る。

その後が結構苦戦する。今のようなはめ込み式ではないが、爪が2か所だけある。それを避けて外そうとするのだが、メカ部が上蓋に張り付いてなかなか割る事が出来ない。横から外そうとするのではなく、カセット挿入部分からメカ部分を押し下げる事でなんとか上蓋は外れてくれた。

これだけでは、ドライブベルトは見えない。見るにはドライブメカ部を外す必要がある。

基本、ドライブメカ部は基盤部分に重なって乗っているいるだけなのだが、再生ヘッドの配線が邪魔をするので外す。

それでも録音ボタンが引っ掛かってなかなか外れない。メカ部を斜めにすることで引っ掛かりを避けて外す事ができた。

基盤をよく見ると「DIP IN」と書いてある。

なるほど、滑り込ませろって感じなのか。取れにくいのも合点がいく。

ベルトの状態

さて、問題のドライブベルトだが、切れては無いが、経年劣化で固形化し、ドライブプーリーから浮いている状態だった。

その下部分にももう一つベルトがあるが、これはそれよりもひどく、割れてしまっていた。

直径は4,5センチと2,3センチで、ベルト形状は四角。厚さは1mm程度。

実はもう一本カウンター駆動用ベルトもあるのだが、それはかなり厚さが細く、外そうとすると、かなり分解しなきゃならないみたいなので、これは別に無くても良いし、何とか切れずに保っているので、切れたら切れたでいいやという事で放置。

補修用ドライブベルトの仕入れ

うーん。輪ゴムでも良いんだけど、輪ゴムだと伸縮が大きすぎるからトルクの掛かる部分ではバネ効果が出てしまうから、これはシリコン系を使った方がやはり無難という事でネットを漁る。

色々安いのが出ているが、厚さが均一でないという書き込みが多いので、安物だと痛い目に合うとおもって、レビューと価格をもとにチョイス。

色んなサイズが沢山入ってた。

黒に黒で見難いかもだが、数種類入っているが何センチ何ミリという記載は一切なく、まぁ、そこはゴムなので「適当に使ってくれや」という国民性がモロに出ている商品であるので、近しいサイズをチョイスする。

装着するが・・・。

でも、太さが1㎜ちょいあるので、少し太めだ。

さて、一度ケースに戻さずちゃんと駆動してくれるかテストするが、まったく動かない。あれ?電源すら入らない。なして?

不動原因究明

原因1:メインスイッチの端子がひん曲がってしまっており、ボタンを押しても連動してなかった。どうやら、ケースを開ける際に曲げてしまっていたらしい。

なかなか開いてくれなかったので、開けたり閉めたり試行錯誤している時に弾みでまげてしまったらしい。気が付いたら曲がっていて、そういう形状なんだろうなと考えていたのだが、どうやら真っ直ぐが正常らしい。

なので、ケースを割った直後の写真ではもう曲がっているのが判る。これでメイン電源は入るようになった。

原因2:早送り巻き戻し用ドリブンプーリの固着。

このプーリが全く動かない。恐らくはグリースが経年劣化で固着してしまっているのだろう。ミシン油を数滴垂らし、少しずつ回転させるとスムーズに動くように復活した。

原因3:早送りギアの割れ。

ギアに一本ヒビが入っているのが判るかしらん?この割れによってギアの間隔が広がり、早送りした時にギアがとまり、そのせいで無理やり動かそうとするプーリーによってベルトが外れてしまう。

なので、ギアをペンチで狭めた状態で瞬接で固定。でも、ギア自体が固くなっていてどうしてもヒビの間隔が狭まらない。なので、結局ギア間隔はそのままになってしまったので、ギア自体をやすりで整え、何とか回るようにした。

こういう物理的な故障であれば、構造や動き方を見てみると設計図が無くても何とかなるけど、電子部品になるとこう簡単にはいかないわな。勉強しなきゃぁ・・・。

ついでにクリーニング

これでなんとか正常に動くようになったので、分解したついでに清掃作業もしときましょう。

ピンチローラーを、このご時世家庭にはあるエタノール消毒液を綿棒にしみこませて、手で回してやりながら汚れを取る。これまたクリーニングをした事が無いのか、まっくろけのけだった。

そして、録再ヘッドと消去ヘッド(磁石?)も同じように清掃。これで綺麗になった。

再び組み立て。・・・うーん、付属のカバーに染みついているすげぇ臭いにおいが本体に移っているようで、少し匂いを我慢しながらの作業。

色々作業していると、配線が切れたりそれを戻したりの作業があったり、紆余曲折で、やっとここまできました。あとはケースを戻すだけ。

無事完成

できた。ついていた紐は必要ないので外した。ケースも臭いので処分。

さて、テープの内容は?

さて、その目的のカセットの内容を確認。ちゃんと聞こえる。やはり30年前の留守番電話の内容だった。懐かしい人の声が聞けたり、自分の声で記念日やメモ的にいれていたり、テープは2巻あったのだが、3年分保存されていて、勿論日時が録音されている。当時の手帳と見比べたりして、その時は自動車整備士として修業していた苦しい時代だったので、その時の情景や懐かしさを思い出し、ほのぼのした時間を過ごせた。意図せず30年前のタイムカプセルを開けたような気分になった。でも、不思議なのは、その30年前の音声を聞いても全然違和感が無いというか、昨日掛かってきた電話といっても不思議じゃない位声が同年代のその人と感じてしまう所だ。人の声というものは、あまり変わらないものなのだと気が付かされた。往年の声優の方とか、殆ど変わらないものね。

アナログの良い所

多分、今のデジタルではれば、この長期間保管できる事はなかっただろう。メモリだったら恐らくは何等かの衝撃等ですぐに全部消えてしまうからだ。アナログではれば、音質が低下したりするが、部分部分でも再生はできたりする。ここがアナログの良いところなんじゃないかと。ただ、今回は簡単に聞けるようにデジタル化して保存しておいた。そのアナログをデジタル化してラベリングする作業がまた面白い。昔のオリジナルテープを編集するように自分オリジナル作品を作るのはとても楽しい作業だ。

テープの構造探求

さて、テープ自体がどういう構造なのかも見てみた。通常サイズはもう使いまくっていたので今更調べる必要はないが、マイクロカセットはこういう場面でしか使わなかったので、見てみる事にした。

録音禁止の爪は三角印の場所側面にあった。

成程。ちゃんと爪はあるのね。ちなみにこのテープはノーマルポジションとあった。ハイポジとかメタルとかあったのかな。

要らないテープがあったので、ジャムった時の為の補修用に分解してしらべてみた。

が。

ネジが無い。どうやらはめ込み式。最近の家電のようにスパッジャーで割ってみるが、

上側は外れたのだが、下側は接着されているのか、無理にこじったら割れた。なので、少し温めて緩みを出すなりの工夫がいるのかもしれない。

一応分解は出来た。こんな感じだ。合理的かつ簡素化されている。今から考えても素晴らしい技術だな。無くなったのは惜しい限りだ。